失われたローマ-Roma Sparita
ローマを歩いていると、ふと、時間が止まったような街角に出会うことがあります。
決してきれいとはいい難いその街角が、遠い国から来た人間でも懐 かしいと感じさせる不思議な瞬間です。
そこにあるのは古代ローマ帝国の栄華でもなく、教皇たちの残した豪奢な建物でもなく、ローマの庶民の生活の舞台であったりします。
そこでこのサイトで一目をおいているのが「失われたローマ-Roma Sparita」と呼ばれる絵画のシリーズです。
「失われたローマ -Roma Sparita」とは
19 世紀後半に活躍したローマ生まれのイタリア人画家、エットレ・ロースラー・フランツ(1845-1907)の代表作であるローマの風景、とりわけ庶民の生活風景を切り取った絵画のシリーズです。
ドイツ系移民の家系に生まれたため、ドイツ系の名前がついています。
当時には珍しく、エットレ・ロース ラー・フランツはカメラを使いながらローマの人びとの日常生活を詳細まで描き上げました。
この「失われたローマ」の一連の作品は、彼の名前を有名にした作品です。一連の絵画は120作品あり、ローマ市が購入し原画をブラスキ宮殿にあるローマ美術館が所蔵しています。実際はドイツでの展覧会の際に一 点が行方不明となっているため、残念ながら一点欠けています。
こちらのサイトでは、デッドストックの絵はがきによる同シリーズの紹介となります。
1970年代を前後して、ローマのお土産のポストカードとして流行していたようで、いろいろな印刷会社がつくったポストカードがローマの街に出回っていたようです。
120作品すべてに出会ったことはなく、ポストカードとしてすべての絵が存在しているのかもわかりません。
原画は水彩画ならではのやさしい繊細なタッチで描かれています。やさしいなかでも細部まで緻密な描写がいきわたっています。
庶民の生活こそ21世紀の今日では大きく変わりましたが、ローマの街角には当時と変わらないものも残っており、実際の風景を比べてみると興味深いです。
時代的にはフロイトがローマを旅行していた頃です。スタンダールやゲーテがローマで過ごした半世紀後ぐらいのローマです。
彼らの著述したローマはエットレ・ロースラー・フランツが描いたローマを思い浮かべるとよいのではないでしょうか。
この頃のローマは統一イタリアの首都となり、中心にはヨーロッパの国の一首都として、政治、文化、科学に貢献した象徴的な建物が建ち始めます。また王政下、王の名を戴いたモニュメンタルな建物もでき始め、ちょっとした建築ラッシュでした。
一方で、エットレ・ロースラー・フランツが描いた庶民の生活はローマの中心部の急速な変化とは無縁のようにすら感じます。
このような時代背景を思い浮かべながら、19世紀の終わりから世界大戦に突入する前のローマを絵画の中で散歩してみてください。
Buona passeggiata a Roma nel fine del diciannovesimo secolo .
未来派の芸術家、ジャコモ・バッラがエットーレ・ロースラー・フランツを描いています。

ポストカードによるローマの街角の風景はこちらからどうぞ。
「失われたローマ」お散歩INDEX
- アルコ・デッラヌンツィアータ通り
- アングイッラーラの要塞
- アングイッラーラ広場の中庭
- ヴォルペ小路の古い家並み
- オッターヴィア門のルア通り
- オッターヴィア門の中世の家
- カステッラーニ家の入り口
- カッペラーリ通り
- キエーザ通りの聖ボノーザ教会
- クロアカ・マクシマの排水口
- ゲットーのアツィメッレのアーチ
- ゲットーのアツィメッレ広場
- ゲットーのカポッチュート通り
- ゲットーのカポッチョッロ通り
- コーラ・ディ・リエンツォの家とされている家
- サルの塔といわれたフランジパーネの塔
- サン・パオロ門
- サン・ピエトロ・イン・ヴィンコリ広場
- サン・マルコのアーチ
- サンタ・チェチーリアの中世の家
- サンタ・マリア・イン・モンテチェッリ
- サンタンジェロ城
- ジュリア通りの隠し扉
- ジュリオ・ロマーノ通り
- ティベリーナ島の中世の廃墟
- テヴェレのアングイッラーラの中世の廃墟
- トロメイのアーチ
- バルベリーニ広場
- ピエルレオーニの家
- ファルネジーナ荘のパーゴラ
- ファルネジーナ庭園のテラス
- フィオレンティーニの橋
- プラーティ・ディ・カステッロ
- ペンティエンツィエーリ通り
- ホテル・オルソ
- ボルゴのカンパニーレ通り
- ボルゴの回廊
- ポルタ・アンジェリカ アンジェロ門
- ポンテ・シストの泉
- ポンテ・ロット 壊れた橋
- リコルベロ通り-ピエルレオーニの要塞の塔
- ルンガレッタの古い中世の家並
- ルンガレッタ界隈の古い家並み
- ルンガレッタ通り
- ルンガレッタ通りの古い家並
- レーゴラ地区のテヴェレ河畔
- 城の野原
- 真実の口の近くのグレカ通り
- 昔のステッラート通り ニコラ・ダ・トレンティーノ通り
ローマの地図から絵画と散歩したい方はこちらの「失われたローマ」マップからどうぞ。
地図へのプロットは更新中です。
画家のお気に入りエリアがわかるような気がします。