下町風情の漂うトラステヴェレでバロック彫刻を鑑賞しつつ、中世のフレスコ画、モザイク、さらには時代をさかのぼって古代ローマ時代の邸宅跡も見学することができる盛りだくさんな教会です。
芸術も遺跡も好きという方におすすめです。
そして、ローマで比較的みかける、中世につけ加えられたロマネスクの鐘楼がご多分にもれずありますが、低地で湿ったエリア、トラステヴェレは地盤が弱いのでしょう、鐘楼が傾いています。
サンタ・チェチーリア教会ではローマ唯一の斜塔、といっているようです。
教会に入ると、祭壇の下に横たわる女性の姿があります。
バロック期の彫刻家ステファノ・マデルノの若い頃の作品であり代表作である彫刻、聖チェチーリアの殉教。
うなじに残る傷が痛々しく、こうして聖チェチーリアは殉教したのです。
しかし奇跡として、剣が彼女の完全に首を落とすことはできなかったといいます。
こうしてチェチーリアはローマで生まれた聖人となり、そしてその信仰の場所に聖人の名前を頂いた教会が建てられました。
マデルノの彫刻の上にある聖体用祭壇の緻密な細工も見事です。
白い大理石に金色が施された、天使、チェチーリアとその夫ヴァレリウス、その兄弟の殉教者とチェチリアに洗礼をしたウルバヌスの四人がレリーフとなっています。
祭壇にはコズマーティ様式独特の燭台を見ることができます。
後陣の9世紀のモザイクが見事です。
モティーフは、サンタ・プラッセーデ教会やサンタ・マリア・イン・ドムニカ教会に見られるのと同じように、キリストのサイドにローマの守護聖人であるペテロとパウロ、エデンの園を表すヤシの木、そして羊とその両サイドには、ベツレヘムとエルサレムの街が描かれています。
バジリカの入り口の上には中世のピエトロ・カヴァリーニのフレスコ画が見事に残っています。
この教会の見所はまだまだ続きます。
教会に入って左手にあるお土産を売っている所から地下遺跡の見学ができます。
ここからは有料であすが、トライアヌス帝もしくはアドリアーノ帝時代、2〜3世紀のトラステヴェレが栄えていた頃の
ドムス(邸宅)が残っています。
また、シリンダー型の8つの大きな穴がある部屋があり、その用途はいまだ解明されていないそうですが、穀物を入れていた穴かもしくはこの辺りは革工房が多かったエリアなので、その工房のものかという説があります。
奥には中世時代の見事な地下聖堂があります。
床はコズマーティ様式のモザイク、天井はセラフィムのレリーフに宝石がちりばめられたヴォールト天井になっています。
長い歴史の中で、幾度も侵攻されたローマだが、これだけ大粒の宝石がよく残っていたものです。
サンタ・チェチーリアはローマの音楽アカデミーの名前にもなっていることからわかるように、音楽の守護聖人。
2世紀にローマの一貴族の娘として生まれたチェチーリアは、まだキリスト教がローマでは認められていなかった信仰の頃、
ローマ郊外で捕らえられて、家の浴室で夫とその兄弟らと殉教したと伝えられています。
アッピア街道のサン・カリストの地下墓地で眠っています。


サンタ・チェチーリア・イン・トラステヴェレ教会
Basilica di Santa Cecilia in Trastevere
Piazza S.Cecilia,22 – 00153 Roma
トラム8番