連なるアーチがかかった坂をくぐりぬけると、ひっそりと「CASE ROMANE」と彫られた石版がある。
間口も広くなく、気づかなければ見過ごしてしまいそうな入り口を入ると、古代ローマ時代の邸宅跡をみることができる。
内部は撮影することができないので写真の紹介はできないが、キリスト教が禁じられていた時代のローマの邸宅で、
壁にはキリストを崇拝していることがうかがえる壁画が残されている。
キリストが衣服を着たまま十字架にかけられている珍しい壁画である。
人々がひっそりと集まって祈りをささげていたのが伝わってくる。
邸宅は、坂の麓にその入り口があるが、坂の上には、現在はサンティ・ジョヴァンニ・エ・パオロ教会が建っており、
この場所での敬虔な祈りが後の教会建立につながったことが想像される。
その教会の司教が、祀られた聖人ヨハネとパオロのお墓を探したところ、地下に20ほどの部屋が見つけたことが
このローマ時代の邸宅群を発見のきっかけとなったとか。
ひとことに古代ローマ時代の邸宅跡といっても、
ここでは、2世紀の裕福な層が住んだ、ドムスといわれる
いまでいえば一軒家に近いつくりの邸宅と、
3世紀に入って、人口増加のために増えたインスラと呼ばれる、
路面は店舗、上階は集合住宅という形式のいわゆるアパートが時代を違えて層をなしている。
その後、教会が建てられたことにより、邸宅跡は教会の基礎に分断され、
遺跡は迷路のような、複雑な遺跡となった。
ドムスの名残として、個人のバスルームが残っている。
当時は浴場と言えば公衆のものであったが、水道を個人宅に引き入れ、
バスルームをつくることができたのだから、経済的に恵まれていたということ。
現在では地下となったバスルームはなんとも息苦しさをも覚える、湿った空間。
当時の市井の人びとの住居空間を垣間みることができて、興味深い場所。
その迷路のように入り組んだ地下の空間が、探検気分にさせてくれる。
芸術と探検、ちょっとおもしろい組み合わせ。
この遺跡が再び日の目を見るのは、ローマで考古学がさかんになった
1800年代の後半のこと。
内部には、出土品を展示した展示スペースもあり、
表向きはひっそりしながらも見応えのある場所となっている。
このエリアでは、サン・クレメンテ教会でも地下の遺跡を見ることができます。
学芸員によると、邸宅の前の坂に連なるアーチは、坂の麓のひとつだけが、
ノルマン民族に侵攻された11世紀のもので、あとはゴート族に侵攻された
5世紀のものとのこと。
ひとつだけ、色が違うので、いわれてみるとなるほど。
■ チェリオの丘の古代ローマの邸宅
CASE ROMANE DEL CELIO
入館料:6ユーロ
少人数の場合は予約不要(10人未満の少人数の場合)
入館は30分ごと
休館日:火曜日・水曜日
開館:10:00-13:00/15:00-18:00
メトロB Circo Massimo (チルコ・マッシモ)駅
バス 60, 75, 81,175,673番
トラム 3番
Clivo di Scauro, 00184 Roma
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