ローマには物言う像 Statua Parlanteと呼ばれる像が街中にいくつかあります。
今日でもいろいろと落首が貼り付けてある像があります。
ナヴォナ広場からコルソ・ヴィットーリオ・エマヌエーレⅡ世通りに向かうと、べたべたと貼り紙のされた顔の凹凸がほとんど無い像が建っています。
1501年のオルシーニ家の宮殿の建設までは薄汚い泥だらけの薄暗い中世の街角でしかなかったこの界隈に、他の像たちと共にごろんと横たわっているだけでした。おかげで、どこの誰だかわからないような顔になってしまっていますが、3世紀あたりの彫刻とか。
この界隈が整備されて、パスクイーノが置かれました。
この頃、ローマは教皇領でローマ教皇の支配下にありました。
庶民の暮らしは大変でしたが、それでも公に物を言うことはできません。
そこで、近所の歯に衣をきせぬ物言いをする靴屋の主人、パスクイーノはこの像に落首を貼り付けました。
するとみるみるうちにこれが流行ったそうです。人々は刑罰を恐れて夜中にこっそり貼ったとか。
その後、靴屋の主人の名をとって、ローマのもの申す像、パスクイーノと名づけられました。
教皇領の続く19世紀までこの風習は庶民の間で続きます。
一番有名なのはパスクイーノでしょう。なぜなら、pasquinata(パスクイナータ)、風刺文という意味のイタリア語にまで昇格しましたからです。
トラステヴェレにあるパスクイーノという映画館1もこのパスクイーノに由来します。
上映している映画は普通の映画ですが、英語で上映されるため、旅行者やイタリア語に不慣れな人たちに利用されています。
物言う像はパスクイーノひとりではなく、他にもバブイーノ通りのバブイーノ、樽をもったファッキーノ、カピトリーニ美術館に展示されるほど格上げされたモルペウスは、カンピドーリオ通りで物言う像のひとりです。
今日でもいろいろ貼られているのはパスクイーノだけではないでしょうか。
皆さんも何かパスクイーノで物申してみてはいかがでしょう。
- 存続を切望する声がありながら、残念ながら閉館しています。 ↩︎
