ローマの水族館 現・ローマ建築会館

テルミニ駅に程近いエスクィリーノ地区は、ここはイタリア?と思わせるほどいろいろな人々が行き交う人種の坩堝。
最近では中華系の貿易商の事務所ならず、店舗のほとんどが中華系です。アジア人である私たちにはアジアの食品が手に入りやすいありがたいエリアでもあります。
ヴィットリオ・エマヌエーレ広場に立つ市場はイタリアのスーパーや市場では手に入らない日本食には欠かせない野菜も並ぶので、これまたさらにうれしい場所でもあります。

そんなエリアにひっそりと、Acquario Romano、ローマの水族館、と掲げられた周囲とは雰囲気が異なる、ローマ建築風の建物が建っています。
現在は「ローマ建築会館」として、建築家の講義や、建築、デザイン、写真に関する展覧会や、CADなどの実践的な講習を開催しています。
遠目ではわかりませんが、その建物のディテールは、かつてこの建物が水族館であったことを物語っています。
見上げると、ファサードはまるでフォロ・ロマーノにある凱旋門のよう。
建物の平面はコロッセオと凱旋門があわさったような形になっています。

凱旋門の後ろは円形競技場の形をしたパラッツォが続きます。フリーズには海の生き物が彫刻されています。

建物の前の庭は池がありましたが、現在は無く、テルミニ駅地下にも見られるセルヴィウスの壁が残っています。古代ローマ、共和制時代より古い王政時代の物です。フォロ・ロマーノよりもさらに数世紀時代をさかのぼります。

水族館建設の経緯

1887年に水族館としてオープンしたのですが、なぜこのような記念碑のような建物としたのでしょうか。
1871年、統一イタリアの首都となったローマは、近代ヨーロッパの新しい首都として、宗教とは一線を画した、科学の力を集約させた都市を目指そうと、養魚の専門家のピエトロ・ガルガニコをコモより招聘します。

また、この頃、ブルジョワがエククィリーノに移り住み始めたのを機に、このエリアに新首都ローマの心意気の表れである科学施設である水族館をつくることにしました。

建築家エットーレ・ベルニッヒは「ローマらしい」折衷様式の建築というコンセプトのものとに、アーチと円形競技場に着想を得たモニュメンタルな設計デザインとしました。

細部には水族館らしく、レリーフには海の生き物を施し、階段にはローマ神話の海の神のネプチューンのアイテムである銛をデザインモチーフに使いました。

建物の内部の壁画にも見られるように、この建物と同じ頃、やはり記念碑的な建築がローマに建てられています。

フォロ・ロマーノを背に、ヴェネツィア広場の前にそびえるヴィットリオ・エマヌエーレⅡ世記念堂です。
どちらも新生ローマの象徴的な建物です。

ところが水族館としてこの建物が使われたのはわずか十数年のことでした。

水族館のあとは見世物小屋となったり、劇場となったりしました。
見世物小屋時代には中央のアトリウムの床のモザイクに馬などの動物が大きなダメージを与えてしまうことになります。

その後は、選挙事務所となり、さらに時を経て、2002年にローマ建築会館として公にデビューすることになります。
著名な建築家の講演や、建築、デザイン、写真などの展覧会を開催しているので、こちらの方面に興味のある人は、建築会館のメールマガジンに登録するとイベント案内がアップデートされます。

水族館として残っていれば、それなりに楽しめますが、ローマの建築会館としての役割なら、建物としては安泰でしょうか。ローマの建築の情報発信地として頑張ってもらいたいものです。 

正面入り口に、受付がありますが、希望すれば建物の概要を説明してくれます。2002年のオープン以来、残念なのは、意外と知られていないということだそうです。
建築という分野に限られているのと、おそらく立地的に観光地とは離れたエリアであることかもしれません。建築に興味のある方はぜひ足を運んでみて下さい。テルミニ駅からすぐです。

※この記事の内容は掲載時のものであり、現在と異なる場合があります。
初投稿日: 2010年5月23日

建築会館
Casa dell’Architettura 

Piazza Manfredo Fanti 47   00185 Roma

 

 

 

 

ローマの水族館 現・ローマ建築会館