サスティナブル・デザインとか、持続する建築とか一時期よく耳にした言葉だ。
どうもキャッチフレーズが誕生しては、そのとき盛り上がって収束していってしまう傾向がある。
イタリアでは日本のそのブームに遅れること数年、ここ2、3年、建築についてサスティナブルというキーワードを聞くようになった。
テルミニ駅の南東にあるサン・ロレンツォにある、サン・ロレンツォ・フオーリ・レ・ムーラ聖堂の中のちぐはぐな寄せ集めの断片で構築された空間をみて、持続する建築とは、こういう建物のをことをいうのだと思う。
聖人ロレンティウスが埋葬された場所にコンスタンティヌスが教会を建てたのが4世紀。
やがてこの教会は忘れられたような教会で、時の教皇がその教会の横にマリア様を祀った教会を建てた。
さらに時は下り、古い4世紀の教会とマリア様が祀られた教会を合体させるという大改造がなされたのが13世紀のこと。
この合体によってこの聖堂の内部は段差が多く、不思議な位置から柱が始まっていたりと、アップダウンのあるおもしろい空間となった。
さらに考古学が盛んになった1800年代に地下からいろいろ発見されまた増改築。
第二次世界大戦では空爆という大惨劇に見舞われるものの、遺跡を調達して、修復したのだ。
ファサードのモザイクは修復しきれなかったものの、色は違えど、できるだけ似たサイズの柱をもってきて調和をとっている。
写真のフリーズにしてもデザインのモチーフは似ていてもまったく同じではない。
それでも全体として調和がとれていて見事なのである。
聖人とマリア様の両方が祀られた教会という事実が求心力となってこの教会は姿を変えつつ、破壊されても残っている。
スクラップ・アンド・ビルドが当たり前の東京、日本。
町おこしも、どうもまずはプロデュースありきの日本。
建築にはそこに存在する意義があってこそ、持続する。
キャッチフレーズだけではなかなか持続は難しいと思われる。